カメラを買う理由
スマホで写真撮れる時代にカメラいるのって定期的に話になるので、自分なりの回答を書いておくべきだろうと思ったので書いた文章です。
とはいえカメラ文化にどっぷりつかった人であり、スマホのカメラ機能について詳しいわけでもないので、突っ込みがあったらどこかでしていただけると幸いです。
前提
2024年に書かれた文章なので、巷にあふれる写真の殆どはスマホで撮られていて、しかし一方で写真でメシを食っている人は99%、レンズ交換式のカメラである、という前提に依拠しています。
現代における写真を撮る方法は大きく分けて3つあり、スマホ、レンズ交換式カメラ、コンデジという3本立てであるという前提に立ちます。実際には他にも色々な分類がありますが、今回の文章ではそう扱います。レンズ交換式はその通りレンズが交換できるカメラで、現代では概ねミラーレスと呼ばれているものでしょう。コンデジはレンズ交換できない、いわゆる普通のデジカメです。スマによって最も影響が大きかったジャンルで、ぶっちゃけ瀕死の危機に瀕しています。スマホとの差別化が難しいからですね。
この文章でカメラと言ったときは、大体はレンズ交換式カメラの話、コンテジも条件付で一部含まれている、と思ってください。
カスタマイズ性
ぼくがカメラを買う理由の99%はカスタマイズ性だと思っていて、これはいくつかの小分類があります。
画角のカスタマイズ性
写真には画角があります。撮影者を中心として360度の球状のうち、どれぐらいの範囲を撮影するのか、という話です。カメラにおいてこれは焦点距離と呼び、スマホの標準の焦点距離が大体28mm(カメラオタク向け注:フルサイズ換算)程度です。
最近のスマホはこれに加えてx0.5、x2.0をラインナップしていることが多そうです。x0.5は体感的に20mmぐらい、x2.0は50mmぐらいの画角であることが多いようです。
レンズ交換式カメラはレンズを交換することによってほぼ無限のカスタマイズ性を持ちます。メジャーなレンズでも下は14mm、上は600mmぐらいまで、大体のメーカーでカバーしています。レンズを交換することなく画角を変えることさえできます。レンズを交換できるメリットは、第一に画角の自由度が高いからと言って過言ではありません。
撮影設定のカスタマイズ性
写真を撮るためには一定量の光が必要です。少量の光を無理矢理増幅すると非常にノイズの多い写真になります。光は多過ぎても駄目です。真っ白の写真ができあがってしまいます。
光の量を調節する必要があります。カメラもスマホも3つのパラメータを使って(内部的には)光を調節できるようになっています。
- レンズの大きさ(絞り)
- シャッターを開ける時間(シャッタースピード)
- ISO感度(さきほどの増幅にあたる処理です)
レンズを大きくすれば光の量を多くすることができます。高いレンズというのは大体そういうものです。しかしこれには一つ大きな問題があり、「ボケる」んですね。ご飯の写真とかでハンバーグの写真を撮ったときに、肉の手前はきれいに撮れてても背景がボケてるし、なんならハンバーグの後ろの方もなんかボヤけているのが分かります。これぐらいはスマホでも起こります。逆に作品の雰囲気を出すためにボカしたいときもあります。作品への影響が最も大きいパラメータです。なので、レンズ交換式カメラのレンズには、必ず絞りという光の量を意図的に減らす(レンズを小さくするのに相当する)フィルターが付いています。このため、カメラにおいて最もよく弄る設定項目です。
シャッタースピードもそれなりに重要で、長くシャッター開けばそれだけ光を集めることができるんですが、人間の手は固定できないので手ぶれを起こします。光の量が多いときは早めにしておきたいです。滝の撮影などは意図的に長くすると水が流れているように見えますし、とても短くすると水滴が1つ1つ見えて、これはこれで良いです。飛んでいる鳥のはばたきはかなり短いシャッター時間にしないとブレブレになってあまりおもしろくありません。逆に長くしてバタバタしてる風にしても楽しいかもしれないですが。という話があって2番目に弄るパラメータです。
ISO感度は低ければ低い方がいいんですが、前2つに引っ張られて、上げざるを得ないときもあります。
長々と説明してきましたが、結構多くの場合でスマホやカメラの自動設定はうまくやってくれるんですが、弄れると工夫した写真が撮れるシーンというのはそれなりにあり、カメラというのはそのために複雑な設定項目を供えていたり、すぐに変更できる沢山のダイヤルを装備しています。カメラもソフトウェアで制御できることはあるのですが、やりやすさは段違いです。
逆に言えばそういうのが面倒くさいしスマホでええやというのも一理あり、スマホの主要ユーザがそういう人である限りカメラの専売特許であり続けるだろうと思っています。
コンデジは物によります。とはいえコンデジのメーカーは殆ど同時にレンズ交換式のカメラも作っていて、UIはかなりカメラ寄りだとおもいます。小型化のためにダイヤルが省略されがちではありますが。
その他小道具によるカスタマイズ性
人を撮影するときに最も重要なのはなんでしょうか。後ろに太陽を背負っている人と撮ると顔が真っ暗になる経験はありませんか。つまり顔に適切な量の光を当てることです。証明写真にせよ結婚式にせよ観光地にせよ、かなり強い光を当てることが多いです。まあつまりフラッシュですね。乾電池で駆動するシンプルなものから100Vじゃ足りないようなヤバいやつまでピンキリなんですが、そういう道具が使えるのはカメラならではです。カメラメーカーも純正のフラッシュを出していることが多いです。(勿論他社のものを使ってもいいし、大きいのは専業メーカーもある)
レンズの前面には(一部のコンデジ含む)殆どの場合アタッチメントが取り付けられるようになっています。いわゆるレンズフィルターというものです。単純にレンズを保護するためにフィルターを取り付けることもできますが、単に暗くするフィルター(あまりにも明る過ぎる状態でシャッターを10秒とか開けておきたくなったら必要です)もあるし、PLフィルターもあります。
PLフィルターは単なる偏光板なんですが、これを使うと水面の反射や木の葉の白い反射光を抑えることができ、遠景の霞みも抑えることができます。シンプルに言うと色が濃くなるんですね。特に紅葉シーズンは必需品で、うまい人が撮った紅葉写真の色が濃いのの半分はこれです(残り半分は後編集です)。
星空を撮りたい。でも星の光は微々たるもので普通には撮れない。15秒シャッター開けたい。三脚ってやつを使えばいいんですよ!でも星って動くんですよね、星と一緒にカメラも動かせば解決しますよね、赤道儀の出番ですね。三脚ぐらいはスマホにもありますけど、質も値段の幅も全然違うと思います。
そういう小道具が沢山揃っているのもカメラのいいところですね。
遠景のスピード撮影
すごいざっくり言って、現代において高い最新のレンズ交換式カメラを買ってる人の挙げる、カメラを買う理由の99%がこれです。野鳥でもいいですし、競馬でもいいし、列車でもいいし、スポーツ選手でもいいんですが、こういうのはカメラが良ければ良いほど撮りやすいし、いいものが撮れます。
まず遠くのものを撮ること自体が難しいです。遠くの狭い範囲の光を集める巨大なレンズが必要です。そして巨大なレンズというのは滅茶苦茶ボケます。かなり精密にピントを合わせる必要があります。非常に強力なAF機能が必要です。ましてやすごい早さで動いていたりして、シャッターチャンス自体が短い。瞬間を捉えるために秒間に何十とシャッターを切る。実際のところカメラマンの技量もいる。
というのでそういう競技じみた撮影をするならカメラは必須ですね。選択の余地はないです。お金はあればあるほどいい。持ち出して撮影に行く必要もある。でもそうやって滅茶苦茶最高の1枚が撮れたら最高じゃないですか。たぶん。
※現代カメラは進化し過ぎて、走行する列車は今となっては特別な技術なくてもちょっと前のカメラでも、誰でも撮れる被写体になっています。野鳥は今でも難しい。スポーツ選手や競馬はその中間ぐらいかな。コース決まってるのはすごい有難い。
センサーサイズ
スマホよりカメラの方がセンサーが大きいので有利ってやつです。スマホも結構サイズが違うので調べてみると面白いと思います。センサーが大きくなると色々効能があり、
- 受光する部分が大きいので暗くても沢山光を受けられる(ISO感度を上げてもノイズが乗りにくい)
- 解像度を上げやすい
- 雑なレンズでも解像しやすくなる
- ボケやすくなる
- レンズがでかくなる(デメリット)
- 値段が上がる(デメリット)
主に解像性能まわりにメリットが大きく、ボケの表現幅がすごい増えて重量と価格でデメリットが乗るという理解でいいとおもいます。
※カメラを選ぶ上では結構重要な話として、センサーサイズが変わるとレンズの互換が無くなるという話があり、カメラを買う場合はよく考えてくださいね
再現性
カメラは設定した通りにしか撮影されないので、かなり再現性が高いです。おそらくプロの道具としての需要からそうなってるんだと思っていますが、ここから大きく逸脱するような機能は今のところあまりないと思っています。(あるとしたらホワイトバランスなんですけど、設定変えられるので大丈夫)一方でスマホって全部自動だからか、よくわからない絵が出てくることが結構あるんですが、自分の撮影がわるいのかスマホが勘違いしているのかよくわからないですよね…。もっとも、カメラで撮影失敗して、何が悪いのか推定できるようになるには、それなりの訓練が必要だったりしますが、スマホはAIってやつがうまくやってくれたり失敗したりしたときに、それ分かるかって言われても分かる気がしないんですよね。
ガジェットとして楽しい
レンズ交換で全く違う写真が撮れたり、強化パーツをセットしたり、新しいレンズやカメラがメーカーからリリースされて新たなおもちゃが提供される。実はレンズも純正品とサードパーティーがいて、他社カメラに組込む専用のレンズがあるんですよ。こんな小さい市場に10社ぐらいが切磋琢磨してメーカー毎に個性もある。これはまるでガジェットだ、楽しい!楽しく…ないですか?
画質性能
最後に挙げたぐらいなので、実際のところ優先度がそんなに高くないと思っているやつです。そもそも最近のスマホの画質が比較的高いという話もあるんですが、シンプルに「撮影の性能に表示側の性能が追い付いていない」という方が正しいとおもっています。
撮った写真、他人に見せたいと思う人が比較的多いと思うんですが、その他人はどんな環境で閲覧するでしょうか。SNSに写真を流すなら、Flickrのような専門サイトでもない限り、100〜数百万画素ぐらいまで落ちてることが多いとおもいます。というかFlickrもたしか1000万画素ぐらいなんですよね。一般消費者に手が届く範囲で最高の画素数っていうと大体PCの4Kモニターぐらいですが、これ830万画素ですからね。一方のカメラは既に2000万画素は最低ラインな雰囲気ですが、4Kモニターを軽々と越えています。4500万画素のカメラを愛用していますけど、4Kモニターを拡大しないとドット見えないです。
印刷すると、プリンターの性能や紙のサイズにもよりますが、メートル近い紙のサイズないと4500万画素使い切れないですからね…。お店のデジタルプリントだと1000万画素あたりでサチると思います。もちろんずっとこのままではないでしょうが、この数字感はここ10年で大きく変動していない気がします。
画質は画素数だけではないですが、色の表示可能な範囲もカメラの方が圧倒的に性能が高く、表示側のディスプレーや紙は全く太刀打ちできません。詳しく知りたい人はダイナミックレンジとかで検索してみるといいです。
それでも4Kモニターで拡大しながらにやにやするのは最高なので高画素機で写真撮ってます。つまり自己満足に近い領域なんですね…。